寡黙なトキくんの甘い溺愛
バンッ
敵に背中を向けていた大橋くんが、ボールに当たる。だけど大橋くんは、サッカーの技術を活かして、瞬時に前を向いてボールを胸で受け止めて、勢いを吸収していた。
すると、ボールはゆるやかに私と大橋くんの真上を飛び……そして、落ちてくる。
大橋くんが賭け事をしてきたのは、そんな時だった。
「ねぇ砂那ちゃん、もしも俺の事を一ミリも好きじゃないなら、ボールは取らないで」
「え?」
「でも少しでも俺の事を好きって気持ちがあるなら――ボールを受け止めて。
今の砂那ちゃんの気持ちが知りたいんだ」
「っ!」
いつもはチャラチャラしてる大橋くんの、こんな真面目な顔を見たら……「本気で言ってるの?」と錯覚してしまう。
だって、大橋くんはいつも女の子と一緒にいて、いつも女の子とメールしてる。
「(あ、でも)」
真面目な大橋くんも、私は確かに知っている。サッカーに打ち込むあの姿は、すごく素敵だと思ったのは確かだもん。
「ボール、来るよ」
「!」