寡黙なトキくんの甘い溺愛
瞬間、私の目の前にボールが現れた。咄嗟のことで、つい両手が前に出てしまい、うっかり――ボールを受け止めてしまった。
「え?」
「おっ♪」
驚く私と、喜ぶ大橋くん。外野にいるC組は、歓喜の声に溢れていた。
でも――違う……。
私、いま、咄嗟のことで受け止めちゃっただけ!
「ビックリした。砂那ちゃん、俺に少しでも気があるんだね?」
「ち、ちが!」
即座に拒否すると、ボールが手からツルっと零れ落ちる。そして、地面をタンタンと、軽い音を響かせて転がって行った。
「「あ」」
「……残念だったな大橋、アウトだ。……倉掛さんも」
呆然とする私と大橋くん。トキくんだけが冷静に呟いて、服で汗をふきながら「外野行きなよ」と促した。
う、腹チラが!腹筋が……っ!
トキくんを見ないように、私もコートを後にする。
「トキくん、ごめんね。頑張ってね」
「……うん。応援、してて」
「うん!」