寡黙なトキくんの甘い溺愛



受験の日に倉掛さんに会って、そして恋をした。

嬉しそうにする顔も、悲しそうにする顔も、全てが愛しく見えて……。

一目惚れってやつなんだろうけど、内面に惹かれたのも事実で。

早く会いたいって思ったら、合格発表の日に、彼女と友達を見かけた。


その時に――聞いたんだ。



『砂那、高校入ったら、何したい?』

『ん~……あのね、恋……してみたい』

『え!?どうしたの砂那がそんな事いうなんて!

ちょっと、どんなタイプが好きなのよ。教えなさいよ~』

『え、えへへ、えっとね……』



恥ずかしそうに俯く君が言ったのは、こんな言葉。



『いざと言うときに頼りになるカッコいい人』



そう君が言った。

そして、俺は思ったんだ。



『(今の俺には、当てはまらない――)』



今の俺じゃダメだと思った。

だって俺は……見た目からしてダサいし、身長も低いし、何より……自分に自信がなかった。


もしも倉掛さんが不良に絡まれたら?

他の男に言い寄られたら?



『守れない、よな……こんな俺じゃ。
見た目から舐められそうだし……』



俺自身がもっとかっこよくならなきゃ、強くならなきゃって思って……イメチェンした。

牛乳もダメ元で大量に飲んで、筋トレもした。

運動もできないと、と思って、入学式までにたくさん習い事を入れた。


そして、だんだん自分に自信がついた、そんな時――


俺は君と、再会したんだ。

< 167 / 335 >

この作品をシェア

pagetop