寡黙なトキくんの甘い溺愛
「職員室に呼ばれていたんだったー!」とウソをついて、その場を後にした。
「砂那ー!逃げないでー!」と私の背中に、しずかちゃんの声がささる。だけど私は、今また魔法にかかろうとは、どうしても思えなかった。
◇
「はぁ、はぁ……」
とりあえず走って、長い廊下にやってきた。あまり人の気配がない。時計を見ると、お昼休み終了まで、あと三分を切っていた。
「急いで、帰らなきゃ……」
今きたばかりなのに、もうトンボ帰りをしないといけない。一心不乱に、どこまで走ってしまったんだろうと、自分自身に呆れる。