寡黙なトキくんの甘い溺愛
「砂那……お願いがある」
「うん、なに……?」
「もう一度、大好きって言って」
「え……」
「ダメ?」
「ダメってわけじゃ……っ」
トキくんは顔を上げて、至近距離で私を見た。前髪と前髪が、当たってしまう距離。トキくんの息遣い、トキくんのくぐもった声。そして――お互いの心臓の音。
この静寂の中にいるからこそ、これらの全てが、容赦なく私を意識させる。涙は少しずつ引っ込んでいき、今度顔を見せたのは、リンゴのような真っ赤な「照れ」。私の顔は、まるで早着替えのように、瞬時に赤面する。
「……ぶはっ!」
「な、ちょ、トキくん!笑わないでよ……っ!」
絶対、この赤面を笑われたのだと思って、急に恥ずかしくなる。トキくんはと言うと、さっきの泣きそうだった雰囲気から一変。いつも以上に頬を緩ませて、幸せそうに笑っている。だけど、その顔さえもカッコよくて、まさに非の打ちどころがない、完璧で綺麗な王子様。
「からかいたいのに、からかえない……っ」
「そんな事思っていたの?かわいい」
「(か、かわいい……っ!?)」