寡黙なトキくんの甘い溺愛
「私、トキくんに会って、トキくんの優しさに触れて……一度は諦めた恋が、諦めたはずの恋が、完全に私の中から消える事はなかった。諦めきれなかったの。手の届かない人だって思ってるのに、私とは不釣り合いだって思っているのに……どうしても、トキくんの隣を歩きたくて、仕方がなかった」
「砂那……」
「諦めようと一歩引いたら、トキくんが一歩近づいてきてくれた。その一歩が、私がトキくんを好きって気持ちを加速させた。私はトキくんを、こんなにも好き。私も、あなたが……大好き」
「っ!」
また、ぎゅうっと、私を抱きしめる手に力がこもる。だけど強い力とは反対に、トキくんは弱々しく、私の肩におでこを寄せた。
「トキくん……?」
「嬉しくて……。俺の努力が、やっと実ったなぁって……。ごめん。しばらく、このままで」
「うん……うん……っ」
顔は見えないのに、嗚咽は漏れていないのに、なぜだかトキくんが泣いているような気がした。「トキくん、私ここにいるよ。離れないからね」何気なくそう言うと、トキくんの手に、また力がこもった。