捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「……フランクス、と言ったな」
「は、はい」
授業終了後、アスター王子はよりによってわたしの席に来て、周囲の同期達に尋問……もとい。質問を始めた。
「いつもミリィと仲良くしてもらって感謝するよ」
「い、いえ!こちらこそ…ありがたいです」
フランクス、ガチガチだ。
そりゃあそうだ。騎士見習いの憧れる稀代の英雄とも言われ、しかも第3王子のアスター殿下だ。緊張するな、という方が難しい。
「あ、あの!ぼく、カイン・マーレッドです。3年前のアスカーガの戦い……話を聞いて、感動しました!殿下のような騎士になりたいです!」
「ありがとう」
わー、カインすごいな。自分からアスター王子に話しかけてる。
だけど、たぶん気付いてない。アスター王子は一見笑って見えるけど、目の奥が冷たいってことに。
わたしは、ため息をつきたくなる。
「ところで、君たちはミリィと個人的に会ったり出かけたりするかい?」
「おれですか?いえ、特には……あ、訓練なら一緒にしますけど」
「ほう、訓練……ね。いてっ!」
スパーン、と見事な軽い音が響いた。
「ミリィ、分厚いテキストで叩くな!」
「なに、子ども相手にムキになってるんですか。みっともないからやめてくださいよ」
「ムキになってない!」
「それより、いい音しましたけど。ちゃんと勉強してますか?中身スカスカの軽さでしたけど」
「勉強くらいしてるぞ!」
……周りが呆気にとられたのは正解。皆さん憧れの英雄こそ残念な人間ですから。