「仕事に行きたくない」と婚約者が言うので
「マンフレット様。その、私。覚えておりません……」
もしかして、彼の想い人はヘラルダではない他の誰かかもしれない。
「気にしないで。あのときの僕は、今と見た目が違っていたから。君が覚えていなくても仕方はない」
見た目が違っている、と言われてもピンとこない。今のマンフレットは、味噌っかすと言われながらも、身体の全身にバランスよく、そして程よく筋肉がついていて、しっかりとした一人の男性だ。服を着てしまえば筋肉があるのが分かりにくいのだが、このマンフレットは、たまにヘラルダがいる前でも平気で着替える。見ているこちらが恥ずかしくなるくらいに。
「きのこ頭のチンチクリンとでも言えば、思い出してくれる?」
「あ」
「まさか、本当にその言葉で思い出すとは……。ちょっと、傷つく……」
「ごめんなさい」
そこでヘラルダはマンフレットの腕をとった。
十年前の剣技会の前。ふらふらと一人で出歩いてしまったヘラルダは、庭園の片隅で膝を抱えて泣きそうになっている男の子を見つけた。
どうしたのか、と声をかけると、自分は味噌っかすだから剣技会に出たくはない、と言う。ヘラルダはヘラルダなりに彼を励まそうと言葉をかけるのだが、やはりどこか他人事という意識はあったのだろう。と、同時にいつまでもウジウジとしている彼にだんだんと腹が立ってきて。
もしかして、彼の想い人はヘラルダではない他の誰かかもしれない。
「気にしないで。あのときの僕は、今と見た目が違っていたから。君が覚えていなくても仕方はない」
見た目が違っている、と言われてもピンとこない。今のマンフレットは、味噌っかすと言われながらも、身体の全身にバランスよく、そして程よく筋肉がついていて、しっかりとした一人の男性だ。服を着てしまえば筋肉があるのが分かりにくいのだが、このマンフレットは、たまにヘラルダがいる前でも平気で着替える。見ているこちらが恥ずかしくなるくらいに。
「きのこ頭のチンチクリンとでも言えば、思い出してくれる?」
「あ」
「まさか、本当にその言葉で思い出すとは……。ちょっと、傷つく……」
「ごめんなさい」
そこでヘラルダはマンフレットの腕をとった。
十年前の剣技会の前。ふらふらと一人で出歩いてしまったヘラルダは、庭園の片隅で膝を抱えて泣きそうになっている男の子を見つけた。
どうしたのか、と声をかけると、自分は味噌っかすだから剣技会に出たくはない、と言う。ヘラルダはヘラルダなりに彼を励まそうと言葉をかけるのだが、やはりどこか他人事という意識はあったのだろう。と、同時にいつまでもウジウジとしている彼にだんだんと腹が立ってきて。