闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「ってことは、ひと月くらい前に私は吸血鬼に血を入れられたってことですか?」


 そんなことをされた記憶なんてないのに。

 動揺を隠すことも出来ず戸惑う私に、久島先生は落ち着かせるようにゆっくり話した。


「いいえ。おそらく、あなたが吸血鬼の血を入れられたのはもっと前……多分、半年前の事故の頃じゃないかと思っているわ」

「え……でも、ひと月でヴァンピールになってしまうって……」


 吸血鬼の血を入れられたのが半年前なら、明らかに計算が合わない。

 だって、私はあんな化け物にはなっていない。

 以前茜渚街で見た人ではなくなったモノを思い出し、震えそうになるのを抑えるよう片手で腕を掴んだ。
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