闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 その驚きの隙を突き、大橋さんが動く。

 近付いて来ようとする真理愛さんのもとへ素早く向かい、今度は彼女を拘束した。


「っく! 離しなさい! 早く、恋華さんに血を入れないと!」

「だったら、そろいもそろって私の邪魔をするな!」


 殴られ、櫂人という邪魔が入ったからか、大橋さんは先ほどまでの余裕をなくして怒りの声を上げる。

 声も、表情も、全ての態度に苛立ちが現れていた。


「この二年ずっと探して、やっと手に入るって時に……」


 大橋さんは、グチグチと呟きながら視線を動かし私と櫂人の近くで止める。

 そうして、酷薄な笑みを浮かべた。
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