初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
「ああ見えて三十路を過ぎているそうだし、苦労も絶えないらしい。それでも先代の跡を継いだ大将と手と手をとりながらこの店を立派に切り盛りしていて、本当に頭が下がる。…な?大将」
「ははっ、とんでもございませんよ」
「…そうなんですか」
見れば大将もまだ若い。
先代の跡を継いだとなれば、その苦労はどれほどか。想像するに難(かた)い。
でも、お店のことも客のことも、それから自身が作る料理も凄く大切にされているのがよく解る。
出てくる料理のひと品ひと品に大将のこころがこもっている。それを強く感じることが出来るから。
ゴーヤのお浸しから始まった懐石料理は、どれも旬の野菜がふんだんに使われていて味付けも丁度良くて、夏バテですっかり食欲を無くしていたわたしの胃袋でも「するり」と入って行ってしまう。