初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
「どうした」
「わあっ!!」
物思いにふけっていると、突然専務の顔が、にゅっと視界に飛び込んできて椅子ごとひっくり返りそうになった。
「なっ、なんですか突然っ!!」
「君こそなんなんだ。心ここにあらずな感じだったぞ」
「あ、すいません。少し子供の頃のことを思い出してしまって…」
「そうか。では女将(おかみ)、そのメニューで頼むよ」
…女将?
「はい、かしこまりました」
「えっ、こんな若くて美人さんが女将さんっ!?」
「井上くんっ!」
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
「ふふっ、ゆっくりしていってくださいましね」
コロコロと笑いながら和服美人…もとい女将さんは少し離れたところへ行ってしまった。
「あの若さで女将さんって凄いですね」
よく冷えたお茶を飲みながら専務にコソッと耳打ちした。
どう見ても20代半ばあたりだからだ。