龍神様の贄乙女
てっきり妙な名付けをする親も居たものだと呆れられてしまったのだと思った山女だったけれど、辰は存外穏やかな雰囲気のまま、「父君の好物がナマズやコイやドジョウやウナギじゃなくて良かったな」と微笑んだ。
心底そう思っているらしい辰の口ぶりに、山女は思わずつられて笑ってしまう。
「確かにその通りですね」
(もしそうだったら私、今よりももっと妙な名前だったかも知れないのね)
そう思ったら逆に、山女で良かったとさえ思ってしまった。
***
ブワッと吹き抜けた強風に思わず目を閉じた山女は、次に目を開けた瞬間、大いに戸惑った。
「えっ、あの……ここは?」
「お前と俺の当面の住処になる祠の中だ」
そう。辰が言うように、確かに自分は彼の背後へ付き従うようにして、小さな祠の前に立っていたはずだ。
つい今し方まで二人の目の前にあった龍神様のお社は、身の丈一四〇センチの山女よりも小さな殿舎だった。
それなのに。
心底そう思っているらしい辰の口ぶりに、山女は思わずつられて笑ってしまう。
「確かにその通りですね」
(もしそうだったら私、今よりももっと妙な名前だったかも知れないのね)
そう思ったら逆に、山女で良かったとさえ思ってしまった。
***
ブワッと吹き抜けた強風に思わず目を閉じた山女は、次に目を開けた瞬間、大いに戸惑った。
「えっ、あの……ここは?」
「お前と俺の当面の住処になる祠の中だ」
そう。辰が言うように、確かに自分は彼の背後へ付き従うようにして、小さな祠の前に立っていたはずだ。
つい今し方まで二人の目の前にあった龍神様のお社は、身の丈一四〇センチの山女よりも小さな殿舎だった。
それなのに。