龍神様の贄乙女
 溢れ出す欲情に駆られるがまま、彼女から流れ出る体液の何もかもを味わい尽くして、その小さな身体の奥の奥まで自分のもので満たす事が出来たなら、どんなに心地よいだろう!ととんでもない妄想までしてしまう始末。

 この所、山女(やまめ)自身の(しん)に対する距離感も幼い頃とはどこか変わってきて、時折妙に〝女〟を滲ませるから。
 つい山女自身からも、彼女を手籠(てごめ)にしてしまう事を許されているような錯覚さえ覚えてしまうのだ。

 身の内で渦巻く獰猛な肉欲に流されて山女を傷物にしてしまう前に、一刻も早く彼女を里へ戻さねばなるまい。

 そう思うのに――。


「恥ずかしがっていないで俺を見ろ」

 別れるその日まで、きっと見せなくても問題ないはずの〝それ〟を見せて彼女を牽制してでも、辰は山女をもう少しだけ手許に置いておきたいと(こいねが)ってしまった。

 山女の視線を自分の方へうながしながら、背中を向けた辰に、すぐ背後で山女がひゅっと息を呑む気配が伝わってきた。

「辰様、これ……」

 ややして、そっと肩甲骨の辺りに小さな指先が触れる感触がして、辰はグッと奥歯を噛みしめて、下腹部を直撃するような快感をやり過ごした。
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