龍神様の贄乙女
辰にとって山女は、抱く価値はおろか食べる値打ちもない存在だったらしい。
そこでふと思ってしまった。
――今まで辰に捧げられてきた贄の娘達は一体どうなってしまったの?と。
山女は、主様に捧げられて里へ帰ってきた者は誰一人居ないと伝え聞いている。
では、辰がいま山女に問うて来たように、他所の里に混ざると言う選択肢を選んだ者ばかりだったのだろうか。
山女みたいに皆の厄介者として育てられた娘ばかりが贄となったわけではないだろうし、その選択を迫られて一人も郷里に戻って来ないのはどこか不自然に思えて。
(供物になる必要などないと主様ご自身から言い渡されて戻ってきた贄娘の前例がいてくれたなら、私だってここへ来てすぐの日に里へ帰るという選択が出来ていた……?)
そうなっていたらきっと、里の皆からは贄となる前以上にうとまれた事だろう。
でも、それでもこんな風に辰の傍にいて、彼の事をこんなにも愛しいと思うようになってから放り出されるよりは、よっぽど良かったかも……と思ってしまった山女だ。
そこでふと思ってしまった。
――今まで辰に捧げられてきた贄の娘達は一体どうなってしまったの?と。
山女は、主様に捧げられて里へ帰ってきた者は誰一人居ないと伝え聞いている。
では、辰がいま山女に問うて来たように、他所の里に混ざると言う選択肢を選んだ者ばかりだったのだろうか。
山女みたいに皆の厄介者として育てられた娘ばかりが贄となったわけではないだろうし、その選択を迫られて一人も郷里に戻って来ないのはどこか不自然に思えて。
(供物になる必要などないと主様ご自身から言い渡されて戻ってきた贄娘の前例がいてくれたなら、私だってここへ来てすぐの日に里へ帰るという選択が出来ていた……?)
そうなっていたらきっと、里の皆からは贄となる前以上にうとまれた事だろう。
でも、それでもこんな風に辰の傍にいて、彼の事をこんなにも愛しいと思うようになってから放り出されるよりは、よっぽど良かったかも……と思ってしまった山女だ。