龍神様の贄乙女
 いるのは(きよ)の忘れ形見を守るため、彼女の力の一部を分け与えられ仮初の主に仕立て上げられた自分と、清がそんな辰を使って最期に遺した次世代の龍神の卵――川底に沈むあの宝玉だけだった。

 清が【辰との子】である卵を、その子の父親の辰に託して身罷ったのは、今からおよそ十二年前、辰が十六の時だった。

 本来ならば、龍は世代交代に際してどこかの里から気に入った(おのこ)をさらって来てまぐわうらしいのだが、清はその相手に赤子の頃から育てて来た辰を選んだ。

『お前はそのために育てた子じゃ』

 清の寝所に呼ばれて彼女から性の手解きを受けながら、まるで睦言でも交わす様にそう告白された。

 だから辰の初めての相手は清だったし、それ以外の選択肢なんて持てなかったのだ。

 辰が、娘のように育ててきた山女(やまめ)に手を出せなかったのも、自分と重なる部分があったからに他ならない。
 辰には出来なかったから、山女には運命に縛られず、自由に最初の相手を選ばせてやりたかった。


 さすがに二つの時の記憶はないが、十二の年に近隣の里から生贄の娘が送られて来た時の事はしっかり覚えている辰だ。
 辰の前ではいつも、銀髪の美しい女人(にょにん)の姿をしていた清が、銀虹色の鱗を持つ一匹の龍になって、年端も行かぬ少女を駕籠(かご)から出すなり裸に剥いて一呑みにした。
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