【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そういえば少し前にそれらしき気配を感じたな、と。

 それでこんなに胸がざわついてるのか……。


 俺はまた外に目を向ける。

 少し前に感じた特別な気配。
 確かにあの気配を感じてから特にざわつき始めた気がする。


「何でも今回は特殊らしくて、“花嫁”が二人いるらしいぞ?」

 ただのおせっかい野郎にもう用はないってのに、鬼塚はそのまま話を続けた。

「まあ、片方は本物にはちょっと劣ってておまけみたいなものだって聞いたけどな」

「……」

 相手をする気のない俺は相槌も打たずにただ外を見る。

 薄闇に覆われた景色を眺めながら確かに気配は二つ感じたことを思い出した。


 二つの気配。二人の“花嫁”。
 確かに片方はほんの少しだけ血の気配が弱かった。

「……」

 でも、なんでだろうなぁ……?

 その弱い方の気配が、特に気になる。

 本物の“花嫁”じゃなくて、劣っている方の“花嫁”に気を引かれる。


 ……胸がざわつく。

 求めることを諦めたはずの俺が、また何かを求めようとしているのか……。

 バカバカしい。

 そう思うのに、引かれる心だけはどうしようもなくて……。


 ざわざわと、胸の奥から全身に侵食していってるかのようだった。


 「……ッチ」

 この求心をどうするべきか。


 答えを出せない俺は、ただ睨むように闇が降りてくる外の景色を見ていた。
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