【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「今回君を連れ去るために協力してくれた家もいくつかあってね。そこの当主達の子供も産んでもらわなきゃならなくなったんだ」

 すまないね、と謝られるけれど謝罪になっていない。


 あまりのことに薬の効果とは関係なくめまいがしてきた。

 これじゃあ本当に産む道具扱いだ。

 そんな目に遭ってたまるものか。


 怒りで頭が沸騰しそうになる。

 好きでもない相手の子供を産むなんて論外だし、五年も永人と離されることも有り得なかった。

 上昇の月の効果か、意識は少しハッキリしてくる。

 でも、まだ体には力が入らないみたいで引きずられるように会場から連れ出されてしまった。


「あなたは、シェリーと“唯一”同士なんでしょう? どうして彼女と一緒にならないの?」

 時間を引き延ばすためにも話しかける。

 完全に夜になって、力が上がれば私でも逃げ出すことくらいは出来そうだ。


「……岸から聞いたのかな……?」

 シェリーの名前に伊織の肩がピクリと揺れ、感情を押し殺したような低い声が返された。


「一緒になるために、君にわたしの子を産んでもらうんだよ」

「そんなのおかしいでしょう⁉ 好き合っている相手がいるのに、他の人に子供を産んでもらおうなんて……シェリーは仕方ないって言いながらも悔しそうだった。あなたは嫌じゃないの⁉」

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