元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「あーもう。なんか馬鹿らしくなっちゃったわ」
ミレーナ先生は顔にかかってしまっていた綺麗な髪を手で払いのけ続けた。
「そうよ。あなたにあの手紙を出したのは私」
「!」
突然、犯人だと認めたミレーナ先生に驚く。
「あなたのことが、心底目障りだったの」
「……っ」
わかってはいたけれど、いざ正面からこうもはっきり言われるとずきりと胸が痛んだ。
「やっと良い人を見つけと思ったのにあなたが毎日毎日しつこくやって来るから……私の入る隙がまるでないんだもの」
そこまで言ってミレーナ先生はふいと後ろを向いてしまった。
「でももういいわ。どうせ、この学園に居られるのもあと少しだし」
「え?」
「私ね、もうすぐ実家に帰らなくちゃいけないの。シャンドリー地方のね。本当はあんなド田舎にはもう帰りたくないのだけど、そういう約束だったから……」
そこまで話して、先生はふっと自嘲するように笑った。
「あなたたちにはどうでもいい話ね。……ごめんなさい。気が焦ってあなたには随分大人げないことをしてしまったわ」
「ミレーナ先生……」
謝ってくれたことにほっと安堵していると、アンナが私の前に進み出た。
「ちょっと待ってください。大人げないって、あの花瓶はそんな言葉で済むようなものじゃ」
聞き捨てならないというふうに言ったアンナに、ミレーナ先生は眉をひそめた。