元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
数日ぶりに足を踏み入れたその部屋は、いつも通り古い紙の匂いがした。
机の上は相変わらず書物や書類が山になっていて、天井スレスレの高さまである本棚の下にもそこに入りきらなかったらしい書物が結構な高さ積まれている。そこだけ見ると、まるで昔からある古書店のようだ。
でも最初、先生がこの学園に来たばかりの頃はここまでの量はなかった。少しずつ少しずつ増えていったのだ。
「レティ?」
先生と話すことに夢中で、これまで気を留めたこともなかったけれど……。
私は先生がいつも座っている椅子の前までいって、一番手前に置かれていた書物を手に取った。
「やっぱり……」
「え?」
歴史の先生なのだから、様々な古い書物があっても不思議じゃない。でも。
「これ、聖女について書かれた本」
声が、震えた。
机の向こう側……いつも私が立っている位置からはうまく見えないように置かれた書物を次々手に取って捲っていく。
《聖女伝説》
《聖女と聖剣の謎》
《聖女の起こした奇跡》
「これも……これも……っ」
《彼の国はなぜ滅んだのか》
《或る亡国の歴史》
聖女についてだけじゃない。前世で私たちが生きた、あの亡国についての歴史書もあった。