元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
なんで今まで気づかなかったのだろう。
これまで何度も何度もこの部屋には入っていたのに。
先生はずっと、聖女のことを調べてくれていたのに……!
アンナが私の肩に優しく手を置いた。
「やっぱりユリウス先生、ちゃんと憶えていたのね」
鼻をすすりながら頷く。
……わからない、もしかしたら私があまりにも聖女の話をするものだから興味本位で調べ始めたのかもしれない。少し前の私ならそう考えただろう。
でも今の私には確信があった。
「でも先生、何を調べているのかしら。こんなにたくさんの本を集めて……きっと何か聖女について知りたいことがあるのよね」
「それは……」
私の中で、もうその答えは出ている。
でも、それを口に出すのは少し勇気が要った。
涙を拭って、私は出来る限り平静を装って続ける。
「もしかしたら私、明日死ぬのかもしれない」
「!? な、何言ってるの、レティ」