元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「アンナはどう思う?」
「え?」
「先生が、本当に誘拐犯だと思う?」

 するとアンナはブンブンと首を横に振った。

「勿論私も信じてないわ! レティが初めて好きになった人だもの。絶対にありえない!」

 友人がそう強く言ってくれて、でもまた小さく胸が痛んだ。

(私が初めて好きになった人……か)

 まだ自分の気持ちははっきりとしていない。でも――。

「そうよね。ユリウス先生がそんなことするわけない」

 先生は確かに全然笑わないしいつもつれないけれど、それでもそんな悪いことをするような人ではない。
 ましてや人を殺めたりなんて、絶対にするはずがない。

「ラウルは、レティとユリウス先生のことあまり良く思っていないから」
「決めた。私、先生の潔白を証明する」

 アンナの言葉を遮るように言うと、彼女は一瞬呆けたような顔をした。

「え? 証明って、ど、どうやって?」
「先生を、とことん監視するの」
「監視!?」

 すっとんきょうな声を上げたアンナに私は強く頷いた。

「先生は誘拐犯なんかじゃないって、私が絶対証明してみせるんだから!!」

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