元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 深夜に学園に戻った私はそのまま医務室に担ぎ込まれた。
 昨日一日中無我夢中で走っていたせいで、気付かぬうちに傷をたくさん作っていたのだ。
 行方不明になった私のためにずっと起きていてくれたソニア先生の治療が済み、部屋に戻った私は泥のように眠った。
 そして朝日が昇ると同時にすっきりと目覚め、そのままこの部屋に突撃したのだ。
 とにかく早く先生に会いたかった。
 まだ訊きたいことと、ちゃんと伝えたいことがあったから。

「……先生。聖女は皆、本当は死んではいなかったってことでしょうか?」

 聖剣は聖女の身体に溜まった奇跡の代償、穢れだけを落とす、まさに聖なる剣だった。
 現に、確かに刺されたはずなのに私の胸には傷跡すら残ってはいない。
 ちなみに折れてしまった聖剣は先生が厳重に保管すると言っていた。

 先生が首を横に振る。

「わかりません。でも、聖女は最期王国の繁栄と安寧を願って天に召された、そういうことにしないと王国的には不味かったのでしょうね」

 頷く。
 【呪い】となった国民は聖女をあんなにも恨んでいた。
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