元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「ああ、そうだ。先ほど大佐から連絡がありまして」
「えっ」
「彼、命は取り留めたようですよ。まだ意識はないようですが」
「そう、ですか……」
ほっとする。
リュシアン様もきっと安堵しているだろう。
偽りの関係だったとしても、きっとリュシアン様にとっては失いたくない大切な人なのだろうから。昨日の彼を見ていたらそう思えた。
(でも、まさかあのマルセルさんが……)
セラスティア姫のことを恨み、そして私の命をずっと狙っていたなんて。
ちくりと、もうないはずの聖女の証が痛んだ気がした。
「貴女が気にする必要はありません。全てはクラウスのせいです」
「え」
先生の口からクラウスという名を聞くと、やはりどうしても違和感がある。
「彼が……まぁ。前世の僕ですが。己の気持ちを認めず、姫の気持ちを無視し続け挙句暴走しなければ、こんなことにはなっていなかったのですから」
私はぱちぱちと目を瞬く。