怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました

だけど、時にじれったく感じる日もある。もしかしたら、拓海はそれすら見透かしていて、沙綾から求めるよう仕向けているのではと感じるほど。

唇を合わせるだけのキスだけれど、愛しい気持ちは伝えられる。

啄むような口づけを何度も交わし、そのたびに視線を合わせて微笑み合う。合間に愛の言葉を囁かれ、同じように伝え返すと、幸福感が何倍にも膨らんでいった。

何度目かのキスでそっと距離を取ると、沙綾は拓海を見つめ、自身の想いを打ち明けた。

「そろそろ湊人に話してみようと思うんです。拓海さんがパパだって」

その提案に、拓海は驚いた表情を見せる。

「沙綾が決めたなら反対はしないが、早くないか?」
「イヤイヤ期はまだ続きますし、終わるのを待ってたらなかなか言えなくなっちゃいそうで。それならいっそ、湊人が感情を吐き出しやすい今伝えてみるのも悪くない気がするんですけど、拓海さんはどう思いますか?」

彼は子育てに積極的ではあるが、決定権は沙綾にあると考えているのか、必ずなにをするにも沙綾に確認をとってくれる。

きっと湊人に拓海が父親だと話すタイミングも、沙綾がいいと思う時にと考えているのだろう。

しかし今回の当事者は拓海であり、湊人はもちろん、彼の意見も尊重したい。

今の湊人の様子を見ていると、必ずしも話したことでいい方向に向かうとは限らないからこそ、余計に拓海の考えを聞きたかった。

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