年下彼氏の結婚指導
03.
(──久しぶりだな、こういうの)
 職場では一線を画した付き合いを心掛けていたので、基本こういった誘いはしない。
 それくらい全力でついてきてくれた翔悟は、華子にとってかけがえのない後輩となっていた。

(でも、気をつけないとね)
 七歳も年下の相手なのだ。うっかり勘違いや間違いを起こしてはいけない。
(これは仕事の延長、上司から頑張った部下への労い)
 華子は息を整え気持ちを引き締めた。

「そうね、どこがいいかしら。近いところがいいわよね?」
「──あ、それなら俺。行きたいお店があるんです」
 華子が会社近くの居酒屋を頭に浮かべて翔悟を振り仰気ば、にっこりと返された。
「え、あ。そうなの……?」
「はい、二駅程先になるんですけど」
「そう、勿論いいわよ」

 自分からお店を指定するなんて、意外とノリがいい。
(……仕事関係の飲みなんて、嫌なものだと思ったけど)
 少なくとも自分が新卒の頃は萎縮したものだ。
 どこがいい? なんて質問に、率直に希望を出せた記憶などない。
(こうやって相手を翻弄するところも、対外向けかもしれないわね。うん)
 ──ちゃっかり心内で採点をつけつつ、華子はにっこりと笑ってみせた。
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