年下彼氏の結婚指導
 付き合い始めた頃は、四歳も年が違うとお互いの反応がただ新鮮で楽しかった。
 そして段々と顔を出す「男」という堅太の矜持が、華子の目には映らないまま終わってしまった。

 横顔が寂しそうに見えたのはいつ頃だったか。
 
 そんなつもりは無かったけれど、いつの間にやら彼の自信を奪うような、そんな付き合い方になっていたらしい。

 結局上手くいかなかったけれど、彼が幸せそうに笑っているのを見れて、ホッとした。

(変な振られ方をしたと思っていたけど、こうして別れの仕切り直しができたのなら、悪くないかな)
 そんな風に思っていると、手に持っていたレシートがするりと指先から抜けて行った。

「──じゃあこれは、俺のカッコいい先輩へ、日頃の感謝を込めて支払いますね」
「えっ」
 声のする方へ顔を向ければそこには翔悟が立っていて、華子は目を丸くする。
「廉堂君?」
「……誰?」
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