年下彼氏の結婚指導
 それなのに。
 元彼の話をされた時、暗にもう年下とは付き合えないと、そう宣言されているような気持ちになった。

 酷い振られ方をされたのに、平気だと笑う彼女が意地らしくて、何も出来ない自分が悔しくて、翔悟はひっそりと落ち込んだ。
(もっと早く会いたかった……)
 そしたら相手にもされなかっただろうけど。
 それこそ叶うなら、もっと早く生まれたかったと思うけれど。

 落ち込む気持ちをひた隠して、とにかく自分は華子に会えて良かったと一生懸命伝えて──
 そしてハタと気付く。
(そういえば、告白って……した事ない)

 自分から好きになって告げた事がない。
 大抵向こうからか、期待に満ちた眼差しに応える形で口にしてきた。

 でも迷うのも、躊躇う時間も勿体無かった。
 何とかこの縁を手繰り寄せたい。
 翔悟は必死に言葉を紡いで華子の手を離さなかった。
『もっと単純でいいのに』
 小憎らしく思っていた弟の台詞が頭を過ぎる。
(ああ、そういう事か)
 単純に、この人が欲しいと、そう理解した。
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