年下彼氏の結婚指導
16.
 あの場で、それじゃあと別れる訳にもいかず。
 再び翔悟の部屋に訪れた華子は、今こうして彼と膝を突き合わせ、向かい合っていた。

「華子さん、改めて俺と、結婚して下さい」

 そう真っ直ぐに告げる翔悟は先程の勢いは消え失せ、自信が無さそうに見える。
 どう答えたらいいものかと躊躇っていると、翔悟の手が華子の手を包んだ。縋られているような気持ちになる。
 当然、この温もりは嫌じゃない。華子はふうっと息を吐いた。

「はい。──でも結婚を前提としたお付き合い、ね」
 そう笑えば翔悟はホッと息を吐き出した。

「年齢とか過ごした時間とか、言いたい事は沢山あるけど……」
 翔悟が何か言いたそうな顔をしたけれど。
「廉堂君が私を好きだって言ってくれて嬉しかったから。それに私も……同じ気持ちなので……」
 やっと自分の思いを口に出来て、華子は何だか涙ぐんでしまう。
 結芽とも組んで、翔悟がここまでお膳立てしてくれなければ、華子はきっと口に出来なかった。
「ありがとう」
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