年下彼氏の結婚指導
17.
 目の前に広がる塀に、華子は口をポカンと開けた。
 左右どこまでも広がる壁は一体どこまで延びているのだろう。
 手土産に選んだお菓子を見下ろし、心許がなくなる。
 服は前日に翔悟と選んだので大丈夫だ。……ちょっと値が張ったものの、結果良かった。凄く……

「本当に大丈夫かな」
 とは言え不安は拭えない。
「大丈夫だよ」
 そう笑う翔悟の眼差しは優しくて、自然と気持ちが励まされるが。

「……わっ、本当に来た」
 急に掛けられた声に肩を跳ねさせれば、翔悟とよく似た面差しの男子が門から顔を覗かせていた。
久斗(ひさと)
 渋面を作る翔悟と久斗と呼ばれた彼を見比べて、華子は慌てて頭を下げた。
「は、初めまして! 仁科 華子です」
「やあ、知ってますよ? 翔悟の弟の久斗です。うわあ、未だに信じられないや。あの恋愛不適合者がまさかこんなに早く結婚するなんてさ」
「恋愛、不適合……?」
 首を捻る華子を他所に、久斗は尚も言い募る。
< 71 / 73 >

この作品をシェア

pagetop