自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
「お疲れ様です。塔馬先生、昨夜も手術が長引いたそうですね、夜中の手術も続いてますし」
 優しさのオアシス、俊介先生が労う。

「お疲れ。ダイナミックな手術や困難な手術をやり遂げたときの達成感は、何物にも代え難いものだぞ。まさに外科の醍醐味だ」

 毎日手術が入って当直があるときも重患の管理で、凄く手間がかかったりしているのにバイタリティ溢れる敬太先生って凄い。

 当直で救急手術や入院患者の急変や急患とかが一挙に押し寄せて、寝る間も食べる間もなくなっても、淡々と任務を遂行していくんだから凄い先生で尊敬する。

 それを言ったら隼人院長も俊介先生も葉夏先生も朝輝先生も凄い先生。

「このあいだの合コンで波島がお持ち帰りした子いるだろ?」

 本当に感心する。どこにこんなこと話題にする元気が残っているんだろう。
 私生活はハチャメチャめちゃくちゃ。

「多くの患者を相手にしていると名前や顔を見ても、過去のエピソードを思い出せませんが、治療で陰部を見ているので陰部の大きさや形を見ると、どんな患者だったか思い出すんですよ」

 泌尿器科獣医師特有だって朝輝先生が真顔で言う。

「人間の子もそうっす。顔は忘れているのに陰部見て、ヤベっ、この子と二度目だって思い出して、とっとと終わらせて帰ります」

 自分のルックスとテクニックに惚れられたら、のちのち面倒くさいからって真顔の朝輝先生の自信には恐れ入る。

「で、おい波島、分かんねぇか。俺に連絡してきたが波島と穴兄弟になるのはゴメンだからスルーしといた」
「ワンナイトの誰かっすかね」
「ほぼそればっかだろ」
「後腐れなしだから楽っす、遊ぶには最高っすよ」

「出て来いって誘えばノリよく出て来る極上の女とヤルだけ」
「やめらんないっす、贅沢な都合いい関係。ヤバっ、疼いてきた」

「事前に約束出来ない俺らの急な呼び出しに駆けつけ、都合に合わせる遊びって割り切る女」
 そんな遊び相手は掃いて捨てるほどいるんだって。

 二人には、異性の私がいることは眼中にないらしくて、露骨な話を下ネタを交えながら楽しそうにしている。

 俊介先生は、よく染まらないでいられるなぁ。

「あれは、いつだったか何度目かの鉢合わせの女」

 私が隼人院長チームに入った日にも鉢合わせしたって話していたっけね。鉢合わせって、そう何度もあるもの?

「刺されるかと思った、初めて命の危険を感じたな。お前も気を付けろよ」
「僕、見た目で得してるから手荒な逆上女には当たったことないっす」

 爽やか少年みたいなルックスを見る限り、まさか遊び相手の女の人がいて、とっかえひっかえ派手に遊び回っているような先生には、とてもじゃないけれどまったく見えない。

 少しでも朝輝先生に好意をもっていたら、真実を知って男性不信になるくらいショックを受けちゃう、絶対に。

「俺は気が強ぇ女が大好物だから、当たる確率高ぇんだよ」

「僕、清楚系がベッドで豹変するのがたまんないっす。年上のきれいなお姉さんも美味っすねぇ」
 誰でも良いのかな。

「そこのお嬢ちゃん、よく聞け。今聞いた俺らの話は葉夏にはナイショな」
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