自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
「僕は血を見るのは動物のだけで十分です」

 二人の会話に苦笑いで首を傾げるようにして、いちおう頷いてみた。

「素直で聞きわけ良い子は可愛がってあげたくなる」
「やめたほうがいいっす、本気になりますよ」
「だな、こんな純粋そうなお嬢ちゃんに本気になられたら面倒だ」

「なに言ってるんっすか、塔馬先生がっすよ?」
「俺が、このお嬢ちゃんにか?」
 冗談やめろと言いたげな敬太先生が鼻で笑った。

「本気になるのは塔馬先生の方かもしれないっすよ。うるんだ瞳で子犬のように見上げる無上の美少女である、この子の魅力はハマったら危険っす」

「甘ったるいミルクのニオイがする、この体を抱けるかよ。抱きついてきたときの髪の毛だって甘いミルクのニオイだった」

 無理無理無理って両手で追い払うジェスチャーする? 実際にする人初めて見た。

 今まで一部の人たちから邪魔者扱いされてきたから、邪険にされると過敏に感じてしまって傷付いてしまう。

「ふにゃふにゃ柔らかくて子猫と同じ感触だったぞ? このお嬢ちゃんのどこに発情するんだよ」

 朝輝先生を見る目は神経を疑うような目で、終始にやにやと口もとに笑いを浮かべる。

「まず、顔が極上に可愛いから候補でしょう。小柄でもバランスいいスタイルっすよ」
「俺は無理、甘ったるくて胸焼けして腹壊しそう」

「本気といえば、『年下の研修医に本気になりそうで怖いから』って、僕と次の約束をしなかった某都内の大学病院の女医が、数日経ってから食事に誘ってきたんです」

「それホラーだな。女医以外なら『症例検討や研鑽に時間がかかり帰りが遅くなるからヤルの無理』って難しい言葉を並べとけば納得すんのにな。女医は賢いからこの言い訳が通用しない」

「なんとか言いくるめましたよ。一度味見してたし速攻逃げました」
「選択に間違いはない、それ一択だ」
「ヤッたらそこまで。本気になられたら面倒っすもんね」
「ま、最悪、逃げ切れなかったら最後は金だな。金できれいに別れろ」

 敬太先生は高収入、実家太いお金持ち。なんだって、お金で解決できちゃう環境なんでしょうね。

「手切れ金を突っ返すのはドラマの中だけだ、全員しっかりと受け取る。世の女は現金な奴らばっかだ」
「現金だけにね」
 朝輝先生なに言ってんだか。しかし、私はなにを聞かされているのか。

「あのぉ、葉夏先生がいらしたら大騒ぎになると思うのですが」
「それもそうだ、このへんにしとくか」

 なんだかんだ言って、敬太先生には葉夏先生が別格な極上のパートナーなんだね。
 頭も上がらなそうだし。

「さてと、今時間あるから分からないって言ってたアレやるか」
 朝輝先生が分からないアレってなに?
「エッチなことなんですか?」
 話の流れで思わず聞いてしまった。
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