自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
第八章 その瞬間は突然やってきた
寒さは通り越して頬も鼻も、ちくりと刺されたように痛い。肺も驚くほど空気が冷たい。
師走の忙しさは一瞬のように過ぎ去っていき、隼人院長チームで初めてのお正月を迎えた。
医局は可愛い鏡餅やお正月らしい飾り付けをして、少しでもお正月の雰囲気を出そうとクリスマスのときみたいにチーム一同で盛り上げようとした。
当直の先生や通勤して来た先生たちや大樋さんが医局に入って来るたびに口々に新年のあいさつを交わす。
「僕の可愛い阿加ちゃん、今回は院長こそこそしてなかった?」
「はい、さすがにおせち料理は隼人院長手作りとはならないと思います」
「残念だな、あまりにクリスマス料理が美味しくて楽しみにしてたのになぁ」
「あら、波島先生、お正月は毎年お雑煮を作っているのは私ですが、お口に合いません?」
みんなを待ち構えていて、ごちそうしてくれる大樋さんが笑顔で質問している。
「そんなバカな。どれだけこの一年間、大樋さんのお雑煮を待ちわびたことか。やっと今日食べられるから超嬉しいっす」
「あんたってホンっっっトにお調子もんよね、信じられないわ。大樋さん、私と阿加ちゃんに先にください」
「はいはい、お待ちくださいね」
鰹出汁の良い香りが漂い、お餅の焼ける香ばしい香りも漂ってきて喉がごくんと鳴る。
お盆の上に大樋さんが乗せてくれるお椀の中に、結んだ三つ葉と青菜を乗せていると葉夏先生が敬太先生と俊介先生を呼ぶ声がした。
「大樋さん、隼人院長は?」
「すぐに帰って来るわよ、これ運んで」
「はい、ありがとうございます」
お箸もお盆に乗せてテーブルへ持って行くと、俊介先生が次々にお椀を回してくれる。
「阿加ちゃん、大樋さんのお雑煮は出汁が抜群で鶏肉、大根、人参が入っていて美味しいんだよ」
手を握らんばかりの優しい笑顔の俊介先生の顔を見るだけで美味しさが伝わってくる。
みんなの差し入れもテーブルいっぱいに並べられて、さっきからお腹が催促して鳴きっぱなし。
「おっ、うまそうだな、いっただっきます!」
「敬太待ってなさいよ、すぐ戻るって院長おっしゃったでしょ」
「あったかいものはあったかいうちに食うんだよ、お前らもさっさと食えよ」
「塔馬、てめぇって奴は薄情だよな。なんですぐに戻って来るって言ったのに待ってらんねぇんだ」
隼人院長が動くたびに冷気が感じられる。外はよほど凍てついているんだ。
「隼人院長、外に行くのにコートを着て行ってくださいって、いつも言ってますでしょ! 風邪引きますよ!」
コンビニ袋からドリンクを出して配っている隼人院長を叱った。
「道永、お前もう尻に敷かれてんのか」
「っるっせぇな、まずは己の頭の蝿を追え」
「なぁ、叱られるのも良いだろ、俺らなんか尊敬されて普段は叱る立場だから新鮮だろ」
「敬太を叱れるのは私だけだもんね」
「塔馬、口動かしてんなら惣菜を並べろよ、ほら」
隼人院長が近くのお店で予約していてくれた和食オードブルを手渡すと「そこ場所を開けろ」って、敬太先生がテーブルのど真ん中に置いた。
クリスマスとお正月。二大イベントも病院の中に閉じ込められて、外のにぎやかな風景とは段違い。
師走の忙しさは一瞬のように過ぎ去っていき、隼人院長チームで初めてのお正月を迎えた。
医局は可愛い鏡餅やお正月らしい飾り付けをして、少しでもお正月の雰囲気を出そうとクリスマスのときみたいにチーム一同で盛り上げようとした。
当直の先生や通勤して来た先生たちや大樋さんが医局に入って来るたびに口々に新年のあいさつを交わす。
「僕の可愛い阿加ちゃん、今回は院長こそこそしてなかった?」
「はい、さすがにおせち料理は隼人院長手作りとはならないと思います」
「残念だな、あまりにクリスマス料理が美味しくて楽しみにしてたのになぁ」
「あら、波島先生、お正月は毎年お雑煮を作っているのは私ですが、お口に合いません?」
みんなを待ち構えていて、ごちそうしてくれる大樋さんが笑顔で質問している。
「そんなバカな。どれだけこの一年間、大樋さんのお雑煮を待ちわびたことか。やっと今日食べられるから超嬉しいっす」
「あんたってホンっっっトにお調子もんよね、信じられないわ。大樋さん、私と阿加ちゃんに先にください」
「はいはい、お待ちくださいね」
鰹出汁の良い香りが漂い、お餅の焼ける香ばしい香りも漂ってきて喉がごくんと鳴る。
お盆の上に大樋さんが乗せてくれるお椀の中に、結んだ三つ葉と青菜を乗せていると葉夏先生が敬太先生と俊介先生を呼ぶ声がした。
「大樋さん、隼人院長は?」
「すぐに帰って来るわよ、これ運んで」
「はい、ありがとうございます」
お箸もお盆に乗せてテーブルへ持って行くと、俊介先生が次々にお椀を回してくれる。
「阿加ちゃん、大樋さんのお雑煮は出汁が抜群で鶏肉、大根、人参が入っていて美味しいんだよ」
手を握らんばかりの優しい笑顔の俊介先生の顔を見るだけで美味しさが伝わってくる。
みんなの差し入れもテーブルいっぱいに並べられて、さっきからお腹が催促して鳴きっぱなし。
「おっ、うまそうだな、いっただっきます!」
「敬太待ってなさいよ、すぐ戻るって院長おっしゃったでしょ」
「あったかいものはあったかいうちに食うんだよ、お前らもさっさと食えよ」
「塔馬、てめぇって奴は薄情だよな。なんですぐに戻って来るって言ったのに待ってらんねぇんだ」
隼人院長が動くたびに冷気が感じられる。外はよほど凍てついているんだ。
「隼人院長、外に行くのにコートを着て行ってくださいって、いつも言ってますでしょ! 風邪引きますよ!」
コンビニ袋からドリンクを出して配っている隼人院長を叱った。
「道永、お前もう尻に敷かれてんのか」
「っるっせぇな、まずは己の頭の蝿を追え」
「なぁ、叱られるのも良いだろ、俺らなんか尊敬されて普段は叱る立場だから新鮮だろ」
「敬太を叱れるのは私だけだもんね」
「塔馬、口動かしてんなら惣菜を並べろよ、ほら」
隼人院長が近くのお店で予約していてくれた和食オードブルを手渡すと「そこ場所を開けろ」って、敬太先生がテーブルのど真ん中に置いた。
クリスマスとお正月。二大イベントも病院の中に閉じ込められて、外のにぎやかな風景とは段違い。