白虎の愛に溺れ死に。




「…でも、私死んじゃったら、匡一人になっちゃうじゃん」



唇を歪めながらそう言って、次々に涙の粒を落とす莉音に、ふははと笑った。


俺が先に死んだら生きていけないって言ったくせに、今度は俺の心配してくれんの?


本当、わがままなんだか、優しいんだか。


こんなに面倒で可愛い女、世界中どこ探したって莉音しかいないよ?


ぷっくりと膨らんだ涙袋を次々濡らす涙を拭って、キスをすると、いじけたような瞳がこちらを向く。


その瞳に目を細めて、もう一度軽く口付けてから静かに口を開く。




「先のことなんて分かんねえけど、莉音の亡骸をきっちり見送って…俺も後を追うように死ぬんだろうよ。
だって莉音…俺がいないと俺探して泣き喚きそうじゃん?」


「…ん、叫ぶ。」


「だろ?…だから、俺は早く莉音に会いに行かなきゃ。
でも、どんだけ急いでも「匡、なにしてたの?!遅い!」って怒られるんだろうけどなぁ。うちの嫁。」


「ふふっ、私のことなんだと思ってんの?」



クスクスと声を出して、ようやく笑顔を見せた莉音に達成感。


こっちまで自然と笑顔になって、今日の良き一日が保証される。




「莉音、今日も愛してるよ?」


「うん、匡、私も。…ずっと一緒にいようね?」





どんな暗い過去をも抹消する、幸せな今。


今まで空っぽだった枠に、収まらないほど溢れる彼女への愛情に…もうずっと前から、俺自身が溺れてる。




白虎の愛に溺れ死に。
Special story
ーendー




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