白虎の愛に溺れ死に。
Special story 2 ー真夏の灼熱ー
「莉音さん、俺特製のスペシャルカクテルどうぞ?」
「ありがとう、匡。」
「いえ。プールどうですか?気持ちいい?」
「うん、ビニールプールってちょっと恥ずかしいけど…冷たくて気持ちいい。」
「それは良かった。」
庭に作られた即興の巨大ビニールプール。
日焼け防止のために立てられた大きなパラソルの下でチャプチャプ脚をばたつかせる私を見下ろしてにっこり笑う匡は今日も至極美しい。
7月になり、全国で連日猛暑が記録されている今日この頃。
ふと、「暑いな、プール行きたい」と呟いた私の一言を聞き逃さなかった匡により、次の日には日本家屋に似つかわしくないパリピなプールが庭に誕生していた。
「すみません、本当はちゃんとしたプールに連れて行きたいんですが…」
「ううん、楽しいよ?ビニールプール。」
「大衆のプールは流石に刺青でアウトですからね。今度貸切のプール予約しますから、今日はとりあえずこれで。」
プールの外側にしゃがんでさらりと髪を撫でる匡は楽しそうに目を細めるから、その毒気のない笑顔にキュンと胸が跳ねてしまう。
この世界に身を置いていれば、死の危険とは隣り合わせ。
外では常にピリついた雰囲気を放っているのに、私と二人きりの時には人が変わったみたいに穏やかになるのが…実はちょっと嬉しい。
ほら、私と一緒にいることによって、匡もリラックス出来てるのかなー?なんて。自惚れかもしれないけど。
「私、泳げないし、本当にこれで十分。深いプール怖いもん。」
匡に甘えるように。濡れた手を彼の手の甲に乗せれば、すぐにその手を取って、もう片方の手で頬を包まれる。
「大丈夫、俺がずっと抱っこしててあげる。」
クスッと笑いながら、親指で撫でられる頬がくすぐったい。
水面の揺れを反射して、いつもよりさらに透明度を増す青い瞳は、まるで子どもを見るみたいに優しく私を見るから…それが少し気に入らなくて僅かに唇を尖らせた。