白虎の愛に溺れ死に。
「…やだ、ずっと抱っこなんて。子どもじゃないんだから…。」
「なんで?莉音さんを守るのが俺の仕事なんだから、当たり前のことですよ?」
「…、匡はもう…世話係じゃないもん。仕事で守ってもらわなくて結構です。」
「ふ、…拗ねないでくださいよ、莉音さん?」
「…」
困った匡見たさにフンッと顔を逸らすと、小さな笑い声と共に背後からかかる声。
あーあ、困らせるの失敗か。匡から見たら、子供がいじけてるくらいにしか思われてないんだろうなぁ…。
匡は優しい。すごく。世界一。
どれくらい優しいか、と言えば、私の何気ない一言のためだけに庭に巨大プールを作ってくれるくらい。そのくらい私への愛で溢れてる。
それなのに、こうやってわざと拗ねたりして、匡を焦らせたい、愛を測りたい…なんて間違ってるって分かってるんだけどね?
分かってるんだけど、辞められないんだよね。それは私がまだ大人になりきれていないからなのかなぁ…。
そんなことを考えながら、若干肩を落としかけた…その時。
「…莉音ちゃん?」
「…っひゃ、」
首筋にツーっと生暖かい感触が這った。
それからすぐに腹部に回る力強い腕。右耳にかかる息。
ゆっくりと、右方向に顔を回せば…
「本当可愛いな、莉音は。」
「…匡、」
「守る、とか建前。本当は水着姿の莉音を抱きしめていたいだけって言ったら怒る?」
「…っ、」
至近距離で、うっすらと弧を描く口元。
私の反応を監視するような真っ直ぐな目は、美し過ぎていっそ怖いと感じてしまうほど。
この息を呑むような彼の空気感に、ドキドキと胸を高鳴らせてしまう私はどうかしてる。
私たちの関係は、一見私が支配しているようだけれど…間違いなく主導権は匡にあるのだ。