磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
目の前に広がる立派な日本家屋に目を丸くする。

「・・・すげえな、お前の実家・・・森とか蔵とかあるじゃねえか・・・門から建物まで遠いしよ。もしかして池があって鯉が泳いでたりすんの?」

「・・・ま、まあね・・・も、ここでいいよ。」

───実家に北岡が来ることになるなんて・・・昨日から本当に人生何が起こるかわからないって思うことの連続・・・。

「親御さんに謝らせろよ。」

「そんなのいいって、子供じゃないんだし。やたら暑かったのと私が自己管理出来てなかったからだし。」

「それじゃ俺の気が収まらねえ・・・。」

どーんと構える門の前で言い合っていると、キイイ、と門が開いた。

「真海、おかえり~大丈夫~?」

どっしりとした門の向こうからこの純日本風の屋敷には似つかわしくない、インドなどの国の民族衣装サリーを身にまとった年配の女性が現れ呑気な声で出迎えた。おでこにも丸くて赤い印のビンディをつけているが、顔は思いきり日本人である。

「お母さん・・・。」

「お母さん!?」

───家が和風だしてっきり着物着てる感じかと・・・。

「会社の人が送ってくれるってあなた?わざわざありがとねぇ。」

母親は悠馬を見てにこやかに微笑んだ。

「あ、自分、真海さんと一緒に働いている北岡悠馬と申します!今日は自分のせいで真海さんがこんなことになってしまって申し訳ありませんでした!」

思いきり腰を折ると真海が慌てて母親に説明する。

「お母さん、この人のせいじゃなくて、私が寝不足だったから・・・。」

「そんなことはいいのよ~。えーと、北岡さん?カレー食べていかない?本格インドカリー。ナン焼いてみたくて、窯買ったのよ~。タンドール窯っていう壺みたいなやつね。」

「せっかくですが、自分は仕事が残ってますので・・・。」

「そう?残念だわ~。また今度来てちょうだいね!真海が付き合う男性っていつもナヨッとした感じだったけど、あたしはあなたみたいなゴリマッチョがいいわ~。安心して真海を任せられるもの。ねえ、北岡さん、婿入りする気ない?」
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