磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「・・・も、もしかしてその一眼レフ、買ったの?」

動揺した真海が話を逸らす。

「そうだよ。ボーナスも入ったし、美しい猫達をいい画質で撮りたくてよ。そのうち猫の写真集出すかもしれねえよ?今のうちにサインいるか?」

「綺麗・・・。」

真海は悠馬の言葉をスルーすると、うっとりとして近くにいたソマリの長い毛を撫でる。

逆三角形の顔に大きな耳、アーモンド型の目、首の周りにはエリ巻きのような毛、そして狐のようなしっぽを持つソマリは撫でられて気持ち良さそうにし、真海は幸せそうに微笑む。

悠馬はそんな彼女の横顔に見とれてしまい、思わずシャッターを切った。

「ち、ちょっと、今撮ったでしょ!」

「悪いかよ。綺麗だと思ったから撮っただけだよ。」

「綺・・・!?わ、悪いよ!肖像権の侵害!」

「彼女の写真撮ったっていいだろ・・・。」

「か、かの・・・じょ・・・。」

「何だよ?違うのかよ?」

「そ、そうだけど!勝手に撮らないで!消してよ!」

カメラを取り上げようと手を伸ばす。

「わっ、やめろ・・・。」

悠馬は言いかけて彼女の顔が近いことに気づく。

「!」

真海もその近さに気づいて離れようとしたが、その前に悠馬にグッと引き寄せられ、そのまま唇が重なった。


悠馬はハッとして離れる。

「・・・ごめん、つい・・・。」

───うわー今城キレるだろうな・・・殴られるかも・・・。

「・・・別に。」

真海は素っ気なく言うと後ろを向き、キャットタワーにいる猫を撫でに行く。

───キスってここまでドキドキして気持ちいいものだったっけ!?一瞬だったのに、余韻がやばい・・・猫を見て気持ちを落ち着けよう。

真海が目が合わせた均整のとれた体型のロシアンブルーは、口角の上がった気品に溢れた表情をしていたが、興味がなさそうに宝石のようなエメラルドグリーンの瞳を彼女から逸らした。
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