磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「何?」

「は、花火見に行かねーか?」

「花火?」

悠馬はちゃぶ台の上に花火大会が特集された情報誌を置くと、端を折ってあるページを開く。

「で、その、暑いし人多いし、お前がまた体調崩したら大変だからさ・・・ホ、ホテルの部屋で見るのはどうかなと思って・・・。」

「え?もしかして私が倒れたことまだ気にしてくれてるの?」

胸がキュンとなるのを自覚する。

「・・・ま、まあな。」

『悪いかよ。』とつぶやき目を逸らす。

「わ、悪かないけど、あんたのせいじゃないって何回も言ってるでしょ。たまたま調子悪かっただけで。あんなこと初めてだったし、私そんなにか弱くないよ。」

「そうじゃなかったとしても気になるんだよ・・・。」

少しの沈黙。お互いへの想いがまた育っていくのを感じた。

「ホテルって・・・泊まりってこと?」

「・・・お、おお。3時にチェックインして、5時半から飯食って、7時から一時間半くらい花火見て、それで泊まって朝飯食って10時にチェックアウトってプランなんだけど・・・。」

「それってあの花火大会でしょ?もう予約いっぱいなんじゃない?」

「いや、さっき電話したらキャンセルがあって若干空きがあってさ・・・。」

「そうなんだ・・・。」

───朝まで一緒にいるのは初めて・・・玉川ちゃんと新貝くんに高級焼き肉おごった日、盛り上がって帰り遅くなったから家まで送ってくれたけど、お互いの部屋に上がったこともないし・・・。

「あ、嫌なら別にいいからよ。」

───本当はよくねーけど・・・。

軽い調子で言いつつ内心では相当ドキドキしていた。
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