磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「え。」

「居酒屋とか、北岡さんがご希望のところどこでも。」

「ええと・・・。」

「もちろんお代は私がお出しします。」

「いや、その・・・。」

「今夜は一人でいたくなくて・・・。」

「そ、そうだよな・・・。」

いつも快活な日野がしゅんとしていて、近くにいてやりたい気持ちになる。

「白状しちゃうと私、北岡さんが自分の彼氏だったらよかったのにって思ったことあったんです。趣味や考え方も似ていて一緒にいて楽しくて。北岡さんとならきっと上手くいくんじゃないかって。」

「え・・・!?」

「今すぐ付き合ってくださいなんて言わないし言えないけど、今夜だけ一緒にいて頂けませんか?」

まっすぐ見つめてくる日野から目が離せない。彼女は悠馬の異性の好みを具現化したような女性だった。

───真海、ごめん。

悠馬は右手を日野の方に伸ばした。彼の左手にはスマホがあった。『遅れるけど行くから』と打ち込み送信マークをタップしていないメッセージアプリを開いたまま、画面は消灯されていた。
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