磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「ここ、まつ毛ついてる。」

「えっあっほんとだ!やだ、泣いたから・・・。」

悠馬に指差された左目の下を鏡で確認している日野を見ながら、悠馬は考えていた。

───日野さんみたいな女が俺の理想だった。そんな女いないだろってどこかで思ってたのに本当にいて驚いた。日野さんと一緒にいると楽しいし心がずっと穏やかでいられて楽だ。なのに同僚として、人間としては彼女に好感を持っていても、それ以上には決して思えない。それは・・・。

悠馬が今夜一緒に過ごしたいのは目の前にいる理想の女性ではなく喧嘩してばかりの真海だった。

───あいつが俺の好みを塗り替えたんだ。あいつとのスムーズにいかない毎日が、めんどくさいあいつが、俺はどうしようもなく好きなんだ。理由なんてわかんねえし、そんなもんいらねえ。ただ磁石のN極とS極みたいに対極なあいつとどうしようもなく引かれ合っちゃうんだよな。もうあいつしか考えられないし、もう離れられない・・・ってのは俺の一方的な想いかもしれねえけど。

会社でふたりが付き合っていることを知っているのは玉川、新貝、葉吉、彩木の4人のみだった。恥ずかしいからそれ以外の人には言わないようにしようとふたりで決めていたのだ。

───真海、ごめん。言うわ。
< 90 / 118 >

この作品をシェア

pagetop