甘い恋をおしえて
莉帆が親族の好奇の目にさらされているというのに、佑貴は平然と会話を楽しんでいるようだ。
このパーティーも三回目ともなると、莉帆にも会の流れがわかってきた。
カウントダウンが終わったら、こっそりマンションに帰ろうと思い立つ。
じっとそのタイミングを見計らっていた。
応接間の大時計がゆっくりと時を告げ始める。ボーンボーンと鈍い音が十二回鳴り響いた。
「おめでとうございます!」
「明けましておめでとう!」
あちこちで歓声が上がり、乾杯の音頭を誰かが取っている。
入り乱れてグラスを傾けているのを尻目に、莉帆はそっと抜け出そうとした。
(ひと言だけ、佑貴さんに言わなくちゃ)
新年の挨拶をせずに先に帰るのは申し訳ないので、夫を探した。
ちょうどひとりになっていた。
飲み物を選んでいるらしく、バーカウンターに立っている彼の背の高い後姿が目に入った。
「佑貴さん」
莉帆に声を掛けられたのが珍しかったのか、振り向いた佑貴は怪訝な顔をしている。
「新年おめでとうございます。申し訳ございませんがお先に失礼いたします」
それだけを言いきると、莉帆はサッと玄関に向かった。
こんな時、身軽に動ける洋服でよかったと思いながら自分のパンプスを手伝いの女性に出してもらう。