大嫌いの先にあるもの
自然と目が覚めた。久しぶりによく眠れた。
隣を見ると春音の穏やかな寝顔がある。

少しだけ隣で眠るつもりだったが、そのまま寝てしまったようだ。
時計を見ると、もうすぐで7時になる所だった。

春音は何時に起きるのだろう?もう起こした方がいいか?
そう思った時、春音からアラーム音がした。

音源を探ると、それは春音のジーパンのポケットに入っていたスマホだった。
驚いた事に春音はその音を聞いても起きない。
眠りが深いようだ。

春音を見ると少しだけ口が開いていて無防備だ。

「朝だぞ」

つんっと唇に触れると、春音の唇が閉まった。だけどまたすぐに口が開く。可愛すぎる。なんでこんなに可愛いんだ。

昨夜の言葉は本当に嬉しかった。
春音にまさか許してもらえる日が来るとは思わなかった。

でも、起きたら忘れていそうだ。
春音の酔っ払いぶりは凄かったからな。甘えん坊で別人みたいだった。

「春音、ありがとうな。春音のおかげで少し、心が軽くなったよ」

無防備な顔をして眠る春音の頭を撫でた。すると春音が「うーん」と寝返りを打った。全然起きる気配がない。

「春音、起きなくていいの?」

春音の体を揺らすと、二重まぶたがゆっくりと開いた。

「おはよう」
「おはよう……ございます」

昨夜とは違う、かしこまった態度がおかしい。

「なんで敬語?」

「いきなり朝だったからびっくりして、その……」

「アラーム鳴っていたよ」

春音のスマホを渡すと、なんでって顔をしている。
やっぱり昨夜の事は覚えていないようだ。

まあ、いいか。
< 198 / 360 >

この作品をシェア

pagetop