悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
◇
「オフィーリア」
そっと扉を開けると、カサッと衣擦れの音がする。
寝室に入るのはさすがにはじめてだ。
ずっと躊躇して入れなかった。
けれど、出征からの帰還だ。顔を見せるのに夜遅くに入っても誰にも文句は言われまい。
事実、もう侍女たちは寝室に引き上げてしまっているのだから起こすのも忍びない。
必死で言い訳を考え、中に進むと、
「殿下?」
と鈴の鳴るようなかわいらしい声が聞こえた。
うっ…
暗闇でこの声を聞くと…。
「お戻りになられたのですか?」
「ああ。寝ているときにすまない。ウォルターから心配してくれていたと聞いたので、顔だけでも出しておこうと思ったのだが、寝ていたか?」
「いいえ。眠れなかったので」
そしてカサコソと音がしていたが、ほんのりと蜀蝋が灯った。
そのほのかな光の中にオフィーリアの姿を確認する。
オフィーリアはアシュトンの姿を見てほっとした表情を見せた。
「よかったですわ。お元気そうです」
にっこり笑う。
ドキンと心臓がはねた。
いつものキラースマイルとはちがう。本物の笑顔だ。
こんな笑顔を…見せてくれるなんて…。
ヤバイ。ヤバいぞ。
それに夜着一枚ではないか。
こんな姿を見るのははじめてだ。
あー…。抑えきれるかどうか。
「お疲れのところすみません。今から侍女を起こすわけにもいかないですし…。お茶を淹れましょうか?」
スイスイとアシュトンの方へ向かって歩いてきた。
あー…待ってくれ。
お茶より…お茶よりもっとほしいものがあるんだ。俺は。
気が付けばアシュトンはオフィーリアを後ろから抱きしめていた。
「あ、アシュトン殿下?」
オフィーリアの身体が一瞬かたくなる。
「オフィーリア。心配してくれていたと聞いた。うれしかった」
「え?」
驚いたのか少し大きな声を出しそしてたどたどしく言う。
「はい。やはり出征と聞くと…殿下はお強いですから命まではと思いましても心配にはなります」
不安そうに言われると、一層ぎゅっと抱きしめる。
「今回のは出征と言っても、話し合いの場を設けただけだから剣を交えるようなことはなかったが…それでもうれしい」
そのままくるりとオフィーリアを回転させると自分の方へ向けて、顎をくいっとあげた。
蜀蝋のほのかな灯でそのアメジストの瞳が、本物のアメジストのようにキラキラと輝いている。
ダメだ。もう。
「オフィーリア」
そっと扉を開けると、カサッと衣擦れの音がする。
寝室に入るのはさすがにはじめてだ。
ずっと躊躇して入れなかった。
けれど、出征からの帰還だ。顔を見せるのに夜遅くに入っても誰にも文句は言われまい。
事実、もう侍女たちは寝室に引き上げてしまっているのだから起こすのも忍びない。
必死で言い訳を考え、中に進むと、
「殿下?」
と鈴の鳴るようなかわいらしい声が聞こえた。
うっ…
暗闇でこの声を聞くと…。
「お戻りになられたのですか?」
「ああ。寝ているときにすまない。ウォルターから心配してくれていたと聞いたので、顔だけでも出しておこうと思ったのだが、寝ていたか?」
「いいえ。眠れなかったので」
そしてカサコソと音がしていたが、ほんのりと蜀蝋が灯った。
そのほのかな光の中にオフィーリアの姿を確認する。
オフィーリアはアシュトンの姿を見てほっとした表情を見せた。
「よかったですわ。お元気そうです」
にっこり笑う。
ドキンと心臓がはねた。
いつものキラースマイルとはちがう。本物の笑顔だ。
こんな笑顔を…見せてくれるなんて…。
ヤバイ。ヤバいぞ。
それに夜着一枚ではないか。
こんな姿を見るのははじめてだ。
あー…。抑えきれるかどうか。
「お疲れのところすみません。今から侍女を起こすわけにもいかないですし…。お茶を淹れましょうか?」
スイスイとアシュトンの方へ向かって歩いてきた。
あー…待ってくれ。
お茶より…お茶よりもっとほしいものがあるんだ。俺は。
気が付けばアシュトンはオフィーリアを後ろから抱きしめていた。
「あ、アシュトン殿下?」
オフィーリアの身体が一瞬かたくなる。
「オフィーリア。心配してくれていたと聞いた。うれしかった」
「え?」
驚いたのか少し大きな声を出しそしてたどたどしく言う。
「はい。やはり出征と聞くと…殿下はお強いですから命まではと思いましても心配にはなります」
不安そうに言われると、一層ぎゅっと抱きしめる。
「今回のは出征と言っても、話し合いの場を設けただけだから剣を交えるようなことはなかったが…それでもうれしい」
そのままくるりとオフィーリアを回転させると自分の方へ向けて、顎をくいっとあげた。
蜀蝋のほのかな灯でそのアメジストの瞳が、本物のアメジストのようにキラキラと輝いている。
ダメだ。もう。