悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
「オフィーリア妃殿下だな」

ニタリと嫌な笑みにゾッと背筋が凍る。

「ちがいます」

しらを切ろう。

「ウソをつくな。顔がひきつっている。今日はおまえを襲うようにと指令がくだっていてな。くくっ」

べろりと自分の唇をなめる。

き、気持ち悪い。

後ずさりすると、男がずいずいとオフィーリアのほうへ寄ってくる。

「あちらへ行きなさい。無礼な」

「ここで叫んでも誰もこないぜ。護衛騎士は他の女といちゃついてる。その間に一発やらしてもらう」

グイっと手を引かれた。

あ、終わった。

それでも精一杯の声を出そうとするが、恐怖で声が出ない。

「あ、アシュトン様」

必死で声を絞り出す。

「アシュトン様!助けてっ!」

その時だ。その男がどさりと目の前に倒れたのだ。

股間を抑えのたうち回っている。

「え?」

「オフィーリア。悪かった」

よく知っているムスクの香りに抱きすくめられ、ああっ…とその場に力なく倒れこんだところを抱き上げられた。

「アシュトン様」

ボロボロと瞳から涙が流れる。

「ここに座っていてくれ。コイツを放置するわけにはいかないのでな」

オフィーリアをゆっくりとガゼボに座らせ、アシュトンはその男の首根をつかんだ。

「誰の命令だ?」

バシッと頬を打つ。

「うっ」

呻きながらも口を割ろうとしない。

「答えろ。お前の身元は割れてる。病気の妹がいるんだってな。どうなっても知らないぞ」

するとその男ははっと表情を変えた。

「待て。待ってくれ。俺はどうなってもいい。妹だけは助けてくれ」

「ならば吐け。誰の命令だ?」

「ヴィッカーズだ」

え?

オフィーリアは信じられない面持ちでその男の口から出た言葉を聞いた。

けれど、予想をしていたのかアシュトンは少し眉をひそめただけだった。

「あとは尋問室で聞かせてもらう。連れていけ」

アシュトンが部下に命じ、男が連れていかれるとすぐにアシュトンはオフィーリアの隣に座りギュと肩を抱きしめた。
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