天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
お風呂から出ると啓介さんは待ち構えたかのようにすぐソファに座らせ、また髪を乾かしてくれる。

「啓介さん、どうしてこんなにしてくれるの?」

「え? それは茉莉花が好きだからだろ。構いたくて仕方がないっていうか……」

髪の毛をかきながら話す姿にわかったことがあった。
彼はきっと本心が出ている時は髪の毛をかくんだ。
今まで癖なのかな、と思っていたが啓介さんは決まって素の自分が出ている時にしていた。
話しているうちに彼は少しだけ幼くなり、色気が少しおさまった。

「啓介さんにこうしてもらうの大好き。でも私ばかりしてもらっていて私は何も返せてないよね」

「してもらってばかりじゃない。してあげたいんだ。それにこうして一緒にいられることが俺にとっての幸せだから。笑っていてくれるだけでいいんだ」

彼はそういうと恥ずかしそうな顔をして私を正面に向かせ、ドライヤーをかけ始めた。
ドライヤーが終わるとブラシで整えてくれる。

「さっきのケーキを食べる?」

「うん。あ、ちょっと待ってて」

私はバッグの中からラッピングされた小箱を取り出した。

「私からのクリスマスプレゼントです。いつ渡そうか悩んでて出しそびれてしまいました」

彼はそれを受け取るととても嬉しそうな顔をした。
そしてラッピングを外すと箱から取り出してくれた。

「名刺入れ?」

「はい。何がいいかわからなくて。啓介さんが持っているものはどれも似合っているので私がプレゼント出来そうなものが思いつかなかったの。今日の格好も見ていて、服は選ばなくてよかったとちょっと思っていたの」

「ありがとう。茉莉花が俺のことを考えて選んでくれたっていうだけで嬉しいよ。ずっと大切にする」

彼はぎゅっとハグしてくれた。
2人でケーキを切り、改めて乾杯をしておしゃべりしながら夜を過ごした。
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