天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
彼に連れられて着いた先はこじんまりとしたレンガ作りの一戸建てだった。庭はイングリッシュガーデンのようでアーチや小さな四阿もあった。季節柄バラは咲いていないがアーチを見ると春になればさぞ見応えがあるだろう。

「こっちだよ」

視線の先には木製の重みのある木戸があった。彼はドアを開けていて、私に手招きをしていた。

「はい」

立ち止まっていた庭を小走りに入り口へ向かうと中からいい匂いがしてきた。トマトやガーリック、バジルなど混ざり合った匂いがするがどの匂いも私の食欲をかき立てる。

「いい匂い」

「そうだろう? お弁当は安治郎がおすすめだけどイタリアンはここがおすすめなんだ」

彼は笑いながらそう話し、私に中へ入るよう促した。

「ここは生パスタで美味しいんだ。ファルファッレも美味しい。一見店には見えないだろ?」

「そうですね。素敵なお庭だなと思って通りすぎそうです」

彼は笑いながら中へと進むと女性が出てきた。

「竹之内くんじゃない。お久しぶり。今日は女性となのね」

「はい。俺の株が上がるように美味しいものをお願いします」

女性はフフフと笑いながら庭が見える席へ案内してくれた。

「主人に伝えておくわ。竹之内くんの株を上げないといけないなんて責任重大だわ」

2人の会話を聞いている限りここのお店も彼にとっては気のおけるところなのだろう。
秘書の顔でなく、気さくな素の顔になっていた。
メニューを渡され、私は何にしようか悩んでしまう。
あまり外食をしたことがない私は、どれも美味しそうに見えて決めかねてしまった。その様子を見かねてか、不意に彼から提案をされた。

「シェアするのは嫌かな? 茉莉花ちゃんさえ良ければここの店のいろんなものを食べて欲しいんだけど」

「いいですね! それ凄くいいです。どれも美味しそうで選べなかったんです」

少し興奮気味に私が伝えると彼は笑ってくれた。

「ファルファッレはほうれん草とキノコのクリームソースでいい? エビとトマトのタリアテッレもどう?」

「もう分からなくなってきたのでおすすめをお願いします」

パタンとメニューを閉じると彼にお願いをした。
すると彼は先ほどの女性を呼びオーダーをした。サラダやジャガイモとチーズのガレットも頼んでいた。
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