崖っぷちで出会った 最高の男性との最高のデート(ただし個人の感想です)
「さっきも泣いていただろ」
弓弦は恥ずかしさに下を向く。誰かに自分の不安をぶちまけたいとは思っていた。
職場の友人や同級生に言えば、小さな田舎の町ではあっという間に両親の耳に入ってしまう。
だから誰にも言えなかった。その気持ちを、人生勝ち組の彼らに話すことが、余計に彼女を惨めにさせると言うこともわかっていた。
けれど、迫り来る未来への不安に、弓弦は押し潰されそうになっていた。
そして、彼女は彼らにすべての事情を話した。
「なにそれ・・」
「政略結婚、俺たちの周りでもあることはあるが・・それは君が不幸になるだけだ」
話を聞いて彼らは戸惑い、憤慨してくれた。それだけで弓弦の気持ちはいくらか救われた。
「でも両親の命と天秤にかけられません」
「その融資を申し出た者に何とか責任を・・」
「坂梨さんだってよかれと思ってしたことで、公文書偽造で処罰を受けたんです。だからもうそれ以上は・・」
「人が良すぎ・・」
「ありがとうございます。お二人に話を聞いてもらえて、少し気持ちが前向きになりました」
「いやいや、藤白さ・・弓弦さんって呼んで言い? 何も解決してないし」
「それでも、会ったばかりなのに、こんなに親切にしていただいて、美味しいものもいただいて、素敵な服まで着せていただきました。楽しかったです」
「え、こんなことで? ちょっと幸せを感じるラインが低すぎない?」
「貪欲なお前と一緒にするな」
「貪欲なんて、私は自分の想いに忠実なだけよ」
「お前の場合は少しは我慢することを覚えた方が良い」
「悠だって、好きなことしてモテるくせに一人に絞れず未だに独身じゃない」
「あ、あの、お二人とも落ち着いてください」
ちょと兄妹げんかになりかけ、慌てて弓弦が止めた。
「あ、あらごめんなさい。悠を見てるとつい・・」
「悪かった。君が大変なときに」
「いえ、いいんです。私も兄妹がいればよかった。青海さんみたいなお兄さんがいたらきっと・・」
本当は恋人と言いたかったが、それは言えなかった。彼となら近所の公園やスーパーへ行くだけでも楽しいだろう。
幸福のレベルが低いと朱音に言われたが、代わりに理想の男のレベルは頂点に達してしまった。
手が届かないゆえに諦められる。
「こんなので良ければいつでもどうぞ。熨斗を付けて進呈するわ」
「おい」
朱音がぐいっと悠の背中を押す。
そんな二人のやりとりは、落ち込んでいた弓弦の気分を紛らわしてくれた。
「クス、ありがとうございます。お二人に出会えて良かった」
「悠は完全に勘違いで酷いことしたんだから、お礼はムダよ」
「お前は殺そうとしただろ」
「あの、私、そろそろ帰ります」
「あ、じゃあ、一緒に出ましょ。悠は送っていくから。私もそろそろ帰るわ」
「でも・・」
「遠慮はなし。こんなことで遠慮してどうするの」
断ろうとも思ったが、もう少し悠といられる時間があるならと素直に従った。
「ねえ、これからどうするの?」
エレベーターに乗って地下一階の駐車場へと向かっている間に朱音が尋ねた。
「もう、適当な相手を探すのはやめます。焦っても何もいいことはありませんし」
「その方がいい」
「でもそれじゃあ、目的が果たせないでしょ」
当初の目的。恋愛がしてみたい。は片思いというか仄かな憧れを悠に対して持つことで達成できていたが、それは自分の胸の内にとどめた。
「いいんです。今考えても馬鹿なことしているなと、実感はありますから。ゆっくり観光でもして帰ります。皆にお土産も買いたいし」
「じゃあ、悠は?」
「「え?」」
朱音の言葉に二人同時に聞き返した。
「やだ、息ぴったり」
「じゃなくて、俺が何だ?」
「だから、デートの相手、悠がいいんじゃない? ほら、怪我のお詫びも兼ねて。この際だから弓弦さんが思っている理想のデート、悠に叶えてもらったらいいじゃない」
そうして、悠とのデートが実現したのだった。
弓弦は恥ずかしさに下を向く。誰かに自分の不安をぶちまけたいとは思っていた。
職場の友人や同級生に言えば、小さな田舎の町ではあっという間に両親の耳に入ってしまう。
だから誰にも言えなかった。その気持ちを、人生勝ち組の彼らに話すことが、余計に彼女を惨めにさせると言うこともわかっていた。
けれど、迫り来る未来への不安に、弓弦は押し潰されそうになっていた。
そして、彼女は彼らにすべての事情を話した。
「なにそれ・・」
「政略結婚、俺たちの周りでもあることはあるが・・それは君が不幸になるだけだ」
話を聞いて彼らは戸惑い、憤慨してくれた。それだけで弓弦の気持ちはいくらか救われた。
「でも両親の命と天秤にかけられません」
「その融資を申し出た者に何とか責任を・・」
「坂梨さんだってよかれと思ってしたことで、公文書偽造で処罰を受けたんです。だからもうそれ以上は・・」
「人が良すぎ・・」
「ありがとうございます。お二人に話を聞いてもらえて、少し気持ちが前向きになりました」
「いやいや、藤白さ・・弓弦さんって呼んで言い? 何も解決してないし」
「それでも、会ったばかりなのに、こんなに親切にしていただいて、美味しいものもいただいて、素敵な服まで着せていただきました。楽しかったです」
「え、こんなことで? ちょっと幸せを感じるラインが低すぎない?」
「貪欲なお前と一緒にするな」
「貪欲なんて、私は自分の想いに忠実なだけよ」
「お前の場合は少しは我慢することを覚えた方が良い」
「悠だって、好きなことしてモテるくせに一人に絞れず未だに独身じゃない」
「あ、あの、お二人とも落ち着いてください」
ちょと兄妹げんかになりかけ、慌てて弓弦が止めた。
「あ、あらごめんなさい。悠を見てるとつい・・」
「悪かった。君が大変なときに」
「いえ、いいんです。私も兄妹がいればよかった。青海さんみたいなお兄さんがいたらきっと・・」
本当は恋人と言いたかったが、それは言えなかった。彼となら近所の公園やスーパーへ行くだけでも楽しいだろう。
幸福のレベルが低いと朱音に言われたが、代わりに理想の男のレベルは頂点に達してしまった。
手が届かないゆえに諦められる。
「こんなので良ければいつでもどうぞ。熨斗を付けて進呈するわ」
「おい」
朱音がぐいっと悠の背中を押す。
そんな二人のやりとりは、落ち込んでいた弓弦の気分を紛らわしてくれた。
「クス、ありがとうございます。お二人に出会えて良かった」
「悠は完全に勘違いで酷いことしたんだから、お礼はムダよ」
「お前は殺そうとしただろ」
「あの、私、そろそろ帰ります」
「あ、じゃあ、一緒に出ましょ。悠は送っていくから。私もそろそろ帰るわ」
「でも・・」
「遠慮はなし。こんなことで遠慮してどうするの」
断ろうとも思ったが、もう少し悠といられる時間があるならと素直に従った。
「ねえ、これからどうするの?」
エレベーターに乗って地下一階の駐車場へと向かっている間に朱音が尋ねた。
「もう、適当な相手を探すのはやめます。焦っても何もいいことはありませんし」
「その方がいい」
「でもそれじゃあ、目的が果たせないでしょ」
当初の目的。恋愛がしてみたい。は片思いというか仄かな憧れを悠に対して持つことで達成できていたが、それは自分の胸の内にとどめた。
「いいんです。今考えても馬鹿なことしているなと、実感はありますから。ゆっくり観光でもして帰ります。皆にお土産も買いたいし」
「じゃあ、悠は?」
「「え?」」
朱音の言葉に二人同時に聞き返した。
「やだ、息ぴったり」
「じゃなくて、俺が何だ?」
「だから、デートの相手、悠がいいんじゃない? ほら、怪我のお詫びも兼ねて。この際だから弓弦さんが思っている理想のデート、悠に叶えてもらったらいいじゃない」
そうして、悠とのデートが実現したのだった。