崖っぷちで出会った 最高の男性との最高のデート(ただし個人の感想です)
 「それで、どうしたんですか?」

 下着姿の女の子が自分のベッドにいたら、誰でも驚く。
 でも、彼だって高校生ならそういうことに興味があってしかるべきだろう。
 ラッキーとでも思ったのだろうか。

 「言っておくが、いくら健全なDKでも殆ど話したことのない女の子がいて、ラッキーなんて思わない。逆に恐怖で震えたね」
 「そういう・・ものなんですか」
 「君、俺のこと女と見れば見境いなく飛びつく猛獣だとでも?俺にも好みはあるし、第一親が同じ屋根の下にいて、そんなこと出来るわけがない。時と場所を選べない人間は嫌いだ。たたき出してやった。俺が襲っただとかわめきちらしていたけど、無視してやった」

 同情して良いのか、ご愁傷様としか言い様がない。
 高校生でそこまでするものなのか。自分が高校生の時はどうだっただろうかと弓弦は振り返った。
 バイトと勉強に明け暮れ、恋とは無縁な学生生活。男の子の部屋に下着で忍び込もうなんて考えもしなかった。

 「それで、その後は?」
 「朱音との友情もそれっきり。噂が広がって学校を辞めた。どこか他府県の学校に行ったと聞いたけど、名前も顔もはっきり覚えていない」

 冷たく言い放つ悠の横顔を見て、ぶるりと震えが走った。初めて出会った時の怒声が蘇る。

 「つまり何が言いたいかと言うと、女性と同室だからと無闇に手を出すことはしない。そこら変は紳士と思ってほしい」

 つまりは弓弦に対して興味がないから安心しろと言っているのだ。
 今日の親切は例えるなら親戚の子を可愛がったようなもの。

 「わかりました」

 納得できなかったが、見えない線を引かれて、それを踏み越えるだけの魅力も勇気も技量も弓弦にはなかった。
 ここまで親切にしてくれたことだけで満足するべきなのだ。
 素敵なドライブ、船酔いは残念だったがクルーザーでの船のドライブも、食事も、最後このホテルでの滞在も、弓弦には過ぎた待遇だった。
 ここで納得するべきなのだ。

 「ところで、夕食はどうする?」
 「夕食…ですか?」
 「そう。一応ここのレストランを予約してあるんたけど、食べられる?」

 船酔いで吐いたから、弓弦のお腹は今は空っぽだった。

 「はい、足元が揺れていなければ大丈夫です」
 「ふふ、それは大丈夫だと保証する」
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