崖っぷちで出会った 最高の男性との最高のデート(ただし個人の感想です)
家に辿り着き、取り敢えずは普段着に着替えて、そのまま三人で待機していた。
昼過ぎに県警本部の香坂という警視と東京地検の紅林という男性がやってきた。
「我々東京地検は脱税、暴力団との癒着、政治家への闇献金で高畠を告発します」
「加えて脅迫、詐欺などの罪状も。地元の警察幹部は彼の息がかかっていました。これは警察組織全体に大きく関わっています」
「こちらへの貸付についても、違法な利子で取り立てを行っているようなので、それも精算されるでしょう」
弓弦の家の借金についても、債務整理をすれば既に支払った額がいくらか返ってくるだろうということだった。ただ当の高畠が逮捕拘束されているので、いつになるかはわからないかも、とは言っていた。
「藤白弓弦さんが高畠被告と結婚する前に間に合って良かった」
「あの、ずっと前から高畠さんのこと、探っていたのですか?」
ならもっと早くに捕まえてくれていればと、少し恨みがましい言い方をしてしまった。
「いいえ、我々が彼のことを知ったのはつい十日前です。そこから証拠を探し、緊急逮捕に至りました」
「そうだったんですか」
「それについてはある人物から情報提供がありまして、普通ならもっと時間をかけて逮捕に踏み切るのですが、既にある程度の証拠が揃っていたものですから、それで我々も今日彼を拘束することができました」
「ある人物?」
「ええ、実は私の大学時代の友人なのですが…」
その時、玄関のチャイムが鳴り、新たな来客が来た。
「どうやら彼が来たようです」
母親が応対に出て、その人物と共にリビングに戻って来る。
「弓弦、あなたのお知り合いだと仰る方が…」
「え?」
母親の後ろから現れた背の高い男性を見て私は驚いた。
「は、悠さん…」
高級スーツに身を包んだ二週間前に別れた青海 悠が立っていた。そしてもう一人後ろに知らない男性がいた。
「こんにちは、弓弦さん」
「あなたにこんなお知り合いがいたなんて知らなかったわ」
「ゆう、早かったな」
東京地検の紅林が悠を「ゆう」と親しげに呼んだ。
「彼が今回、高畠達について情報提供してくれた人物です」
呆然としている私の目の前に腰を下ろした悠を、紅林が紹介する。
「青海 悠です」
彼は名刺を父と母に渡した。
「九條佑です」
そしてもう一人は朱音さんの旦那さんだった。
「社長さんと弁護士さん…あの、失礼ですが、娘とはいつどこで?」
そう思うのも無理はないと弓弦は思った。
地元の農協に勤めていた弓弦が、東京で会社を営むいかにもどこかの御曹司といった悠と知り合うのか。
「彼女とは、彼女が東京にいる間に知り合いました。正確には私の妹が先に彼女と出会ったのが縁です」
「はあ…」
「こちらの九條が彼女の夫で、我社の顧問弁護士です。企業弁護士ですが、こちらの債務整理についてお力になれるかと思います」
「あの、どうして悠…青海さんが」
いきなりの彼の登場に弓弦は戸惑うばかりだ。
「毒を喰らわば皿までというか、乗りかかった船というか、君のこと放っておけなくて」
「ほんと、この二週間こき使われっ放しでしたよ。いきなり呼びつけられて高畠達という人物の周辺を探れ、預金口座から取引先、会社の財務諸表に交友関係。あらゆる伝手を駆使して…あんなに嫌っていた親父さんの力まで使って」
九條がブチブチと文句を言う。
「そう言うな、お陰で朱音がまた惚れ直したって言ってたぞ」
「ま、まあ…それくらいでないと…」
「私もここ一週間はほぼ徹夜です」
それに紅林も加わる。
「お前も、前から探っていた国会議員の事務所を捜査することが出来たんだから、一石二鳥だろ」
「まあ…」
三人の会話を弓弦とその家族、香坂が呆然と眺めた。
昼過ぎに県警本部の香坂という警視と東京地検の紅林という男性がやってきた。
「我々東京地検は脱税、暴力団との癒着、政治家への闇献金で高畠を告発します」
「加えて脅迫、詐欺などの罪状も。地元の警察幹部は彼の息がかかっていました。これは警察組織全体に大きく関わっています」
「こちらへの貸付についても、違法な利子で取り立てを行っているようなので、それも精算されるでしょう」
弓弦の家の借金についても、債務整理をすれば既に支払った額がいくらか返ってくるだろうということだった。ただ当の高畠が逮捕拘束されているので、いつになるかはわからないかも、とは言っていた。
「藤白弓弦さんが高畠被告と結婚する前に間に合って良かった」
「あの、ずっと前から高畠さんのこと、探っていたのですか?」
ならもっと早くに捕まえてくれていればと、少し恨みがましい言い方をしてしまった。
「いいえ、我々が彼のことを知ったのはつい十日前です。そこから証拠を探し、緊急逮捕に至りました」
「そうだったんですか」
「それについてはある人物から情報提供がありまして、普通ならもっと時間をかけて逮捕に踏み切るのですが、既にある程度の証拠が揃っていたものですから、それで我々も今日彼を拘束することができました」
「ある人物?」
「ええ、実は私の大学時代の友人なのですが…」
その時、玄関のチャイムが鳴り、新たな来客が来た。
「どうやら彼が来たようです」
母親が応対に出て、その人物と共にリビングに戻って来る。
「弓弦、あなたのお知り合いだと仰る方が…」
「え?」
母親の後ろから現れた背の高い男性を見て私は驚いた。
「は、悠さん…」
高級スーツに身を包んだ二週間前に別れた青海 悠が立っていた。そしてもう一人後ろに知らない男性がいた。
「こんにちは、弓弦さん」
「あなたにこんなお知り合いがいたなんて知らなかったわ」
「ゆう、早かったな」
東京地検の紅林が悠を「ゆう」と親しげに呼んだ。
「彼が今回、高畠達について情報提供してくれた人物です」
呆然としている私の目の前に腰を下ろした悠を、紅林が紹介する。
「青海 悠です」
彼は名刺を父と母に渡した。
「九條佑です」
そしてもう一人は朱音さんの旦那さんだった。
「社長さんと弁護士さん…あの、失礼ですが、娘とはいつどこで?」
そう思うのも無理はないと弓弦は思った。
地元の農協に勤めていた弓弦が、東京で会社を営むいかにもどこかの御曹司といった悠と知り合うのか。
「彼女とは、彼女が東京にいる間に知り合いました。正確には私の妹が先に彼女と出会ったのが縁です」
「はあ…」
「こちらの九條が彼女の夫で、我社の顧問弁護士です。企業弁護士ですが、こちらの債務整理についてお力になれるかと思います」
「あの、どうして悠…青海さんが」
いきなりの彼の登場に弓弦は戸惑うばかりだ。
「毒を喰らわば皿までというか、乗りかかった船というか、君のこと放っておけなくて」
「ほんと、この二週間こき使われっ放しでしたよ。いきなり呼びつけられて高畠達という人物の周辺を探れ、預金口座から取引先、会社の財務諸表に交友関係。あらゆる伝手を駆使して…あんなに嫌っていた親父さんの力まで使って」
九條がブチブチと文句を言う。
「そう言うな、お陰で朱音がまた惚れ直したって言ってたぞ」
「ま、まあ…それくらいでないと…」
「私もここ一週間はほぼ徹夜です」
それに紅林も加わる。
「お前も、前から探っていた国会議員の事務所を捜査することが出来たんだから、一石二鳥だろ」
「まあ…」
三人の会話を弓弦とその家族、香坂が呆然と眺めた。